whitepaperを読んだのでまとめます。
特徴
Ethereum network上のP2Pの非中央集権的な借入サービスです。金額が大きい貸付の場合は、複数人で分割して貸付をすることができます。(Crowd lending
)また、貸付レートはオークション形式
で決定するため、需要と供給が均衡するレートで借り入れることができます。
一番のポイントは担保が必要な借入に加えて、無担保でもレピュテーションで借入ができる
ところです。これを実現しているのは、P2Pが大きいでしょう。先のLibra Creditはファンドなどから貸付の資金を調達していましたが、ETHLendは個人から個人への貸付のみです。そのため、貸す側がリスクを追いますが、借りる側の裾野を広げることが可能です。
また流通しているtokenはLEND
ですが、CRE
というtokenもあるのでそれも合わせてみてみましょう。
トークンの種類
LEND
流通しているETHLendのトークンです。LENDを使って借入をしたり、担保に入れたりすることで手数料などの優遇があります。(LENDの流動性を上げるためでしょう)
CRE (Credit Tokens)
ETHLendには、借りる側が信用を得る方法をゲーミフィケーションする目論見があります。そのため、1回の返済が完了すれば、0.1CREを取得することができるようになっています。
このCREという通貨は取引したり別のアドレスへの送金することですらできません。CREを集めることで信用が構築されていく仕組みとなっています。
CREを集めることで貸す側の興味を引き、担保が十分でなくても借入が可能になるケースがあります。また、CREは信用力を可視化することで、無担保借入を可能にする仕組みになっています。
借入の種類
大きく分けて有担保借入
と無担保借入
があります。ETHLendの大きな特徴として、無担保借入に挑戦しているところが挙げられます。
有担保借入
ERC20のトークンかEthereum Name Service(ENS)を担保に借入ができます。借入の方法はいくつかあります。
LENDによる借入
借り入れる通貨にLENDを利用すると手数料がゼロになります。(利率ではありません。)
LENDを担保
LENDを担保に入れることによって手数料が50%ディスカウントされます。
LENDで借り入れることでLTV(Loan To Value)が60%から70%へ
ETHLendでは通常担保価格の60%しか借り入れることができませんが、LENDで借り入れることで70%まで借り入れることが可能になります。
返済の遅延
期日までに返済が完了できない場合は、割賦金の5%が遅延料金として発生します。その内、2.5%は貸し側に、残りの2.5%はETHLendに支払われます。
無担保借入
無担保借入の評価基準は、上記で説明したCRE、uPort、中央集権型の信用データ、social mediaのデータ、Bloom(信用情報のデータ)などが利用されます。
Uncollateralized loans brings wider borrower audience.
Without using colateral, it would be challenging for borrowers and lenders who do not know each other to trust.
ETHLendとしても無担保借入はかなりチャレンジングだと思っていますが、よりリーチできるターゲットを増やすために、挑戦しているところです。
無担保貸付ができるようになれば、元手がなくとも借りることができるので、本当に借入が必要な人に貸していくことができます。試みは素晴らしいですが、一方で貸す側の責任が大きい
です。
貸す側は以下の4点を閲覧して、貸すかどうか判断することができます。
- Loan history: どれだけCREを集めているか
- Transaction history: トランザクションの履歴
- Balance: 毎月の残高
- Other information: ERC20トークンやENSドメインを所有しているか
Loan history
CREをどれだけ集めているか確認できます。しかし気をつけなければいけないのは、CREによる信用力を悪用されるケースがあります。
1回の返済が完了すると、0.1CREが借り手に入りますが、もし1ETHを借入して0.01ETHずつ100回に分割して返済した場合、返済金額のトータルは1ETHなのにも関わらず、10CREを取得できてしまいます。
10 CRE in turn, allow him to borrow 10 ETH collateral free.
10CREを保有するということは、10ETHを無担保借入が可能になります。月の平均残高が0.1ETHのアドレスに対して、10ETHを無担保で貸し付けるのは非常に危険です。平均残高と借入金額の乖離が大きいときは悪用されている可能性が高いです。
Transaction history
アドレスが作られてからの期間は信用情報の一つですが、トランザクションの数も信用情報として利用できます。
Balance
残高は大切な信用情報です。信用が置けるのは、借入希望額の少なくとも50%を最低6ヶ月間、アドレスで保有していることです。
Other information
MyEthereumWalletでは、View Tokens Balance
のボタンからERC20トークンを保有しているか、ENSドメインを保有しているかがわかります。ENSドメインを保有している場合はロックアップ期間があるので、信用情報としては有効。
信用力の算出
decentralized credit rating(DCR)
が信用力の計算に使われます。
decentralized credit rating(DCR)は非中央集権的な信用レートを意味し、具体的には上記でトークンとしてあげていたdecentralized credit tokens(CRE)
や借入の支払い、利率、担保、借りる側の詳細、アドレスの取引データなどが含まれます。
AIベースのbotがアドレスの信用状況を計算するようにもなっています。
また、Libra Creditと同様に担保貸付の場合は、担保価格が下がったら補填しなくてはいけません。
Bitcoinの借り入れも可能です。
感想
P2Pのため、貸す側にリスクを見極める力が必要とされます。(純粋なP2Pの借入なのでLibra Creditとは異なります。)
ETHLendが目指しているのは、チャレンジングではありますが、レンディング(借入)に参加できる人を増加させる上では、かなり意義のあることです。貸す側がより安全に貸せるようにサービスを向上していく必要はありますが、新しい金融を感じさせてくれます。
一方で、LIBRA Creditは既存の顧客が多く、ゲームユーザーが多いため、借入の利用者が多そうなので、こちらも可能性を感じさせてくれます。機械学習に使うデータも集まりやすそうです。
日本に住んでいるとそれほど実感がないのですが、途上国だと利率が20%とか30%とか平気でやってきます。そういった国であれば、より利率を下げることが可能でしょう。